全部おとぎ話であれ

きらいなものを1000文字で語る

タイムラグ

持続しない性格である。なにもかもが。まじで生まれつきなんだろうなと自覚している。怒りも悲しみも喜びも恋焦がれた時の胸の痛みも、本当に持続しない。


昨日とても投げやりな気持ちになってぶわーっと飲んで文章書いて寝たのだけど、朝起きたら自分でも驚くほどケロリとしていた。万引きGメンに現行犯で捕まっても平気でしらばっくれる主婦くらいケロリとしていた。


それでも昨日の夜と今日の朝というのはどうやら約8時間ほどしか経過していないようで、知人友人からいくつか連絡が来ていた。その優しさ溢れる文面を前に目頭は熱くなり、私は一人でこう呟くほかなかったのである。






やべえ




もうそのテンションじゃねえ






最低ですよね。これだからメンがヘラってる奴っていうのは。呆れるよ自分に。慰め、励ましを受け取るまでのタイムラグで自力で生き返ってしまうタチの悪さよ。


まあつまり俗に言う「寝たら忘れた」ってやつなんですけど、みなまで言う奴おらんけん普通。少女マンガの健気な主人公が好きな人を心配させたくなくて笑顔を作って言う、右頬に汗を垂らした「大丈夫大丈夫!寝たら忘れたの!ハハ……」しか許されんから。私の「寝たら忘れた」はガチの案件だから。寝ても忘れんなお前は。


思えばいつもこうだ。「なんで返信くれんのん!もうやだ!こんな寂しい思いするくらいなら別れる!」と夜中に騒いで、恋人が「分かったよ。じゃあ今から行くわ」って高速飛ばして1時間かけて来てくれるってなったら10分後にはスンッてして「夜中に来られんのダル……」ってなるような22歳の女だったよ私は。それが今の夫です。


前職の休職時だって「もういやだ辞めてやる!これまで私の頑張ってきたことは全て無駄だったんだ!ウワァ~~~~!」って夜中に号泣して、朝になったら午前中からアイス食べながらロンハー見とる女だったよ。もし犬飼ってたら飼い主って認識されないレベルの別人ぶりでは?

 

でもそんな私の切り替えの早さを知らない優しい知人らは、私がすでにケロリとした段階で「大丈夫?ちょっと話せる?」「落ち着いたらでいいから連絡ください」などと言ってくださるわけなのだ。慈悲…慈悲が降り注いでいる……


というわけでタイムラグが嫌いだ。急にどぼんと沼に落ちるのも、なぜか沼から一晩で這い上がれちゃうのも、どちらも私の悪いとこっぽくて嫌いだ。逆に考えると一晩で這い上がれちゃうくらいの浅い沼であれだけ大騒ぎできるとこは尊敬に値する。思春期と厨ニ病のハーフ&ハーフでやらしてもらってます。見捨てないでください。