全部おとぎ話であれ

きらいなものを1000文字で語る

snow

snowが嫌いだ。なんかめっちゃかわいくしてくれるから嫌いだ。めっちゃかわいくなった自分を見せることで、普段いかにこれから遠いかというその現実をはっきりと明確に知らしめてくるから嫌いだ。

 

 

ちょっと肌のくすみが消えたらいいな、とよこしまな気持ちでアプローチショット決めようとする時にカメラの加工技術を使うことがある。ちょっとかわいく撮れたらインスタのストーリーに載せよう、とドキドキしながら脳内でゴルフクラブをぎゅっと握る。

 

 

けれどそれが最強カメラアプリ「snow」だと、目は宇宙人みたいに大きいし顔は宇宙人みたいに細いし鼻は宇宙人みたいに細長くてていうかもう宇宙人だ。気づいたら220ヤード。いやドライバーやんけ。こっちはそこまでの飛距離は求めとらんわ。ただ少しだけほんの少しだけ理想に近づけたらいいかな~くらいの気持ちを汲めよ。

 

 

それに自分が学生時代にsnowがなくてよかったなと思う。こんなもんあったら自撮りばかりして自分は美しいと勘違いしてしまって、夜風呂場で化粧おとしてから鏡見たらいや楳図!!!かずお!!!ギャー!!!と三段階でぶっ倒れていてもおかしくない。

 

 

そもそも「盛る」という概念が苦手になったきっかけがある。

 

 

新卒入社直後、仲良くなった4人でプリクラを撮りに行った。当時のプリクラというのは今はどうか知らないけど何枚か撮ったうちの気に入った5,6種類くらいを選択する。

 

 

その中の1人がぽんぽんぽんと誰と何を相談するわけでもなくスピーディーに選択した。ラクガキブースに入ってみると、驚いたことに選ばれた全てがその子のドチャクソキメキメ顔だったのである。

 

 

ちょ~おま~~~自分の映りしか見てねえな~~~~清楚なふりしてゴリついた利己主義じゃねえか~~~~と心の中で嘆きながら私は自分の二重顎がいい感じに隠れるようにせっせとキラキラのスタンプで隠した。なにごとかというほど顔周りが輝いた。

 

 

そんな自分の映りにこだわりの強い彼女がその数年後に「snowって知ってるー?」と言ってきたときはさすがに「やっぱり?アプリの開発チームに居たよね?」と聞きそうになった。需要があるから供給があるのだということを確信した。

 

 

ちなみにその子とは出会って9年、転職した今も仲良しなのだけど、その子のSNSには今も頻繁にsnowを駆使した家族写真が載っていて相変わらずの善人100%みたいなふるさと納税者みたいなキメ顔で美貌を放っている。でも子供や旦那がだいたいブレてる。盛ったれよ子供は。お前の分身やろうが。