全部おとぎ話であれ

きらいなものを1000文字で語る

ずっと好きでいられないなら最初から見つけるなよ、どうでもいいけど

たまにあるマジメ回。マジメ回っていうか、なんの整理もしない回。今週末に呑みながら書きましたというお祭りがあるからそれまでとっておきたかったんだけど、だめだ、今日はなんかもう飲まないとやっていられない。


お酒も煙草もやめているのはたった一つの目的のためだけど神様が「今日は飲んでいい」って言ったから飲む。あなたはある?トイレでパンツを降ろした時に神様がおりてきて「今日から一週間お酒飲んでいいよ」って。ああ、分かりましたオーケーオーケー。でも来月は来ないでね神様。うっとおしいから。


うっとおしいの本当はずっと。私は綺麗なものには心が動かない。けれど残酷すぎても疑ってしまう。ちょうど中間しかノンフィクションに思えない。でもニュースで見る事件事故は残酷極まりないのに現実なんだって。ビビるよね。特に何も上手くいってないけど普通に三食食べられている、そんな自分が結局一番リアルで人間ぽい。



大きな仕事をしていると良く見せたいと考えてしまう。もっとうまく書けるんじゃないかと消しては、さっきの方が良かったじゃんと絶望する。


私は基本的に自分は嫌われるものだと思っているふしがある。優しくされてもどうせ本当は嫌っているんだろうな、あるいは嫌いになるんだろうなと思ってしまう。逆はあんまりない。私は結構人が好きだ。好きなほうだと思う。


嫌いになったから離れるのではなく嫌いになられそうだから離れる。それを何度も繰り返しすぎて「例えば」に続く人の名前が浮かばない。例えば誰だったっけ。誰がそうだったっけ。


けれど私にも言い分はあるのだ。だったら最初から近づいてくるなよ。好きとか言うなよ。発掘した気になるなよ。宇多田ヒカルを最初に発見した人がすごいんじゃない、宇多田ヒカルを最初から今まで好きでいつづけてる人が一番すごいんだよ。


実は私にはペンネームがある。それを使ってやばめのものを書いたらややバズりしたので片っ端からエゴサしまくった。人は好きだもんな。痛くて、エロくて、先が読めるものが好きだもんな。だからそういうものを書いたんだよ。ぼろくそ書いてあったり称賛されたりしていて、匿名だから痛くも痒くもなくて、死ぬほど楽しくて喉が渇いた。


だからそのペンネームをあげた。欲しがってる人に。その人がSNSで運用していくのをこれから眺めていくつもり。別に要らないよ、それ元々私じゃないから。



なぜこんなにも気持ちが沈んでいるのかなんて理由は一つしかないよ。自分が心から楽しんで書いてきたものよりも匿名で書いた赤青黄色の三原色のみのものの方が余裕でウケたからだ。それにより自分がとても無価値に思えて、ああ、なるほどそうか、だからこんなにも仕事が終わらないのだ。


参っている。トリスハイボール9パーセントおいしい濃いめ、って日本人はすごいよなカタカナも数字もひらがなも漢字も読めて。そんでちょっと聞いてみるけど私のこと好きな人ってこの世にいるんですか?いるなら名前教えてもらえません?カタカナでも数字でもひらがなでも漢字でもいいんで。英語でもギリいいんで。


参っている。こんな苦しさは久しぶりで。


朝7時に歩いた新宿は暗かった。あれからもうすぐ2年が経つ。

 

 

握手

息子9歳と娘6歳がよく言い合いをする。そのたびに我が家では仲直りの儀式として「気づけば握手」を取り入れている。


「気づけば握手」とは二人の手を無理矢理繋がせて母親の私が「気づけば握手!気づけば握手!」とアクシュに爆裂なアクセントを置いて歌うというものなのだが、言い合いが始まった時点で「はい、『気づけば握手』するよ!」と有無も言わさず握手させるので、娘に至っては「はい、」の時点で察して吹きだしキャハハと笑い始めるのである。


ところが今日はなかなか熱いバトルだったらしく「『気づけば握手』するよ!ねえ!『気づけば握手』するって!おい!」と叫んでも全くケンカをやめなかった。
私は私でイライラしてしまい「うっるっせ~~~~!握手しろ~~~!コラ~~~~~!」と叫び、街中で握手をせがむ強めの政治家みたいになってしまった。豊田真由子先生かな?


その直後、娘が息子を叩いた。日ごろから手を出すのは絶対悪と教えているので娘の手首を掴んで「叩いたよね?!この手ちょんぎるけんね!」と言うと「イヤー!!!!!」と泣き始めた。


「おてては何のためにあるんね?!いつも言いよるじゃろ?!優しくするためにあるんじゃろ?!?」と言うと、娘はしくしくと泣きながら言った。


「握手するためにある……」


違えよ。いや違わんけど。落語みたいな話じゃの。


ファミレス

息子のミニバスの練習試合だった。息子の勇姿を楽しみにしながら、まずは腹ごしらえをと夫らと出かけた。娘の希望で近所のファミレスになった。


コロナ対策としてマスクとアルコール消毒の確認を受け、窓際の席へ通された。最近のファミレスはタッチパネルで注文なんやね~と話しながら注文をした。


単身赴任で最近特に忙しくしている夫と久しぶりにこうしてゆっくり食事がとれるなんてなあと喜びをしみじみ噛みしめていたとき、夫が「ねえ」と声をかけてきた。


「あの人らの会話ヤバくない?」


え?伊勢谷友介いた?と思いながら顎で指す方向に目をやると、斜め前のテーブルで男ふたりが喋っていた。白いポロシャツでメガネをかけた人と、背中しか分からないチェックのシャツの人。白いポロシャツが意気揚々と話している。


「で、40歳になったら1万円ずつ入ってくる。月にじゃないですよ?(笑)月にだったら生活できないんで(笑)日に、です。日に1万です。ただ寝とるだけで日に1万。つまり貴方の代わりにお金が働いてくれるんですね~」


いや、うさんくさい。うさんくささ極まりない。けれど白ポロの語り口は流暢でリズミカル、その道のベテランであることは間違いなさそうだった。


私と夫は「やばいやん」と言いながら笑い合って、また自然と別の話題に移った。


すぐにチーズインハンバーグが運ばれてきた。喜んで食べていると夫がまた「ねえ」と言った。


「今度は何?」
「ちょい、こっちもヤバい」


夫は白ポロとは反対側のテーブルを指差した。けれどそっちのテーブルはちょうどパーテーションで遮られていて見えない。私は耳をひそめて声を拾った。

 

 

「祈りのない人を守らないの、◯◯◯様は。あなたのお母さんもお父さんも近所の人も世間の人もみんな、憐れんどる。あなたのことを。みーんな憐れんどる。憐れむって意味分かる?」


話題の香ばしさが増してるやん。このファミレスどうなってんの。てかここ私の生まれ育った町やんけ。ワイこんなキナくさい地で育ったんか?


とまあ若干複雑な気持ちになったりもしつつ左に謎のビジネス、右に謎のセミナーを受け止めながら私たちは黙々と食事をした。これオセロだったら真ん中のウチらも引っくり返ってマトモじゃなくなるくね?もしかして店員がそういう配置にした?店側の意図?


途中、やっぱり右のセミナーが気になってトイレへ席を立ったタイミングでチラ見すると普通のおばちゃんが7人いて真ん中の人がただひたすら喋っていた。えっとどれが憐れまれとる人ですか?と会話に入りそうになった。


気が散りすぎて味が分からなくなってきたのでちょっと足早ではあったが食事を終えることにした。


我が家は財布が別なので「あ~今日は私が払うわ」と伝票をとると夫が「頼むわ。オレ金ない」と言ったのでイラッとした。おいおまえ金ないんなら今すぐ白ポロの男のテーブル行って40歳から1万ずつ貰える話聞いてこいや!!!あと右は右でおばちゃんがおばちゃんを憐れむな!おばちゃんとおばちゃんは助け合え!!!


とまあ無駄にストレスの溜まった冴えない日曜日の昼下がりだった。退店した後、窓の外から目をやるとさっきまで私たちのいたテーブルに同じような核家族が案内されていた。その采配やめろ。どんな手法で店の回転数上げとんな。

 

 

オレ痩せたよね?

シンプルに人の悪口を言いたい。私には高校時代に長く付き合った元彼がいる。もう別れて14年も経っているので何の感情も沸かないわけだけど、そいつからなぜか定期的に連絡が来る。


彼は高校時代ちょっとシュッとしていたのだが大学に入って分かりやすく太った。これまでのモテていた道からマリオカートの赤甲羅ぶつけられたみたく弾かれた。それでもトップを独走していた1週目2週目の自分を忘れられないのだろう。


で、「太ったことを武器にして自虐トークをする」という自分なりのコースを見出したっぽいのだが、本人は無自覚で二枚目の頃の記憶が彼をちょいちょいおかしな方向に動かしている。「本当はイケメンなのに」という自我が人からナメられそうになった時に表情に現れる。

 

 

つまり三枚目に降り切れないのだ。それはもうマリオネット状態。金田一の魔術列車殺人事件で犯人に吊るされていた魔術団の団長状態。

 

 

そんな彼は何を思ったか高校時代の元カノである私に定期的にメールを送る。「俺ちょっと痩せた~」の言葉と謎の伏し目がちな自撮り。私はそのたびに「あ~この季節ですか^^」と受け止める。またこの季節が来ましたねえ。今年の桃は大きいらしいですよ。あーほんますか。へ~~~~~


人のいい私は「そうなんじゃ~」と返事を返してやる。でも比較しようがない。太っとった時のセーブデータ無いし。付き合っとった記憶はもっと無いし。


彼は結局「すき!かっこいい!超タイプ!」としつこく言っていた元カノの私を頼りにしているのかもしれない。おはようの代わりにかっこいいと言っていた罪深い高2の私。そのツケが14年の時を超えて回ってきているのだ。いつまで支払うねん。


そもそも「俺ちょっと痩せた~」て何なん。怖えよ。目的のない報告が一番怖え。「俺ちょっと痩せたよ、この薬のおかげで。買ってみない?」とネズミ講の誘いなら断れる。「俺ちょっと痩せたよ、だからデートしない?誰にも秘密でさ」と不倫の誘いなら地元の友達にラインのスクショを晒せる。


けれどこの「俺ちょっと痩せた~」はネタにもできないし迷惑と呼ぶにはちょっとパンチの弱い、まじで意味分からんラインの報告なのである。


ちなみに変化球だと「俺のヤバかった頃w」と言ってDJ姿の写真や咥え煙草の写真を送ってくることもある。お前まだそれやりよんか。うちら32ぞ。悪さしてました自慢はこんなクローズドな場所じゃ反応に困るんよ。インスタライブでやれ。でもアーカイブは残すな。


そんなわけで私は彼から連絡が来るたび、私がこのメンへラ界のファンタジスタを生み出してしまったんだなあと空を仰いでいる。近年では彼も新しい反応の欲しさから工夫をこらすようになり、一回「オレ痩せたよね?」と自撮りが送られてきたこともある。わしゃタニタか。体重計メーカーの最大手か。「僕は痩せましたか?」って中学英語の絶対使わんと思っとった構文に令和で出会うのやめとけよ。


充電

充電が嫌いだ。常にスマホの充電が20%前後をうろうろしている。

 

 

夜寝る前に必ず充電をできる人は大学受験で五教科七科目ちゃんと履修した奴より凄いと思っている。私は絶対にできない。心底めんどくさい。体温で充電できたらいいのになと思って強めにスマホを握ってみたことすらある。

 

 

「ねえ、これ見て」とスマホを差し出した時に「充電ないやん」という奴がいる。私にとって20%は「ある」なのだが???「充電ないやん」勢と「画面バキバキやな」勢はどこかの世界線で天下分け目の戦いでもしといてほしい。

 

 

しゃーなし笑いながら「充電いつも忘れる」と言うとだいたい「持ち歩ける充電器あるよ」とか親切に教えてくれるのだけど、持ち歩ける充電器すら充電せにゃいけんの詰んでない?なんやその付き合っとる相手の地元の友達にまで媚びにゃいけんみたいな現象。自分がおらん時に「いい子だね」って言われたいがためのやつ。

 

 

しかもそういう奴って私がSNSになんかのスクショみたいなん載せるとやけに親しげに「今日は充電あるじゃんw」みたいなイジり方してくるけどそもそもお前誰やねん。日ごろ知っとるみたいな謎の距離感出してくんな。他部署の上司か。

 

 

 

ちなみに充電はスマホ以外のものもろくにできないのでうちのルンバは常に充電切れだし(うるさくて廊下の途中とかで電源切っちゃう)電子タバコなんてもってのほかだし(一瞬で吸えるライターが優勝)電気自動車なんか買おうもんなら月2でJAFのお世話になると思う。

 

 

私が眠った後そのへんに放り投げられとるスマホが自分で充電器まで歩いてくれたらいいのに。ない?そういう令和のトイストーリーみたいなアレ。

 

 

という話を大人にしたところで相手にされないので判断能力のない息子・9歳に切々と語ったところ「充電してもせんでも生活変わらんのんならいいんじゃない?」と冷めた顔で言われた。完全に血は繋がってますね。あと生活は変わるよ。

 

 

ちなみに娘・6歳にも同じ話をしたら「いいね いいね 大丈夫だね」と言われた。ノンタンみたいで良い。

 

 

 

 

 

 

スマホで読める著書置いときます(宣伝)。発売から4ヶ月経ったけどいまだに売れとるの怖くなってきた。元カレ全員買っとんか?

 

沖縄

大学3年の夏に沖縄に行った。春だったかもしれない。思い出せない。

 

 

 

その時わたしは国際協力プログラムなるものに参加していて、要は「発展途上国に一定期間行っていろいろ考えてくれたら単位あげるよ~!」というマジチョロイベントだった。教育学部にいたものの教師になる気はさらさら無かったので、親友も行くし私も行こ~くらいのノリで参加した。

 

 

私の通っていた広島大学は敷地が広大で、教室移動も車で行くレベルだったので、教育棟から国際なんとか棟までみんなで乗り合わせて敷地内道路を爆走して授業に行ったりして青春だった。

 

 

そこで、外見も中身も松岡修造似の男性教授による「発展途上国に行く前に沖縄に行って自己啓発をしよう」みたいな謎の発案のもと、学生十数人と教授二人で沖縄に行くことになった。2泊3日で沖縄へ、そこからフェリーで座間味島へ向かい民泊に泊まった。

 

 

沖縄へ向かう飛行機の中で教授は「自分にとって5つ大事なものを書き出し、それぞれ同じタイミングで1つずつ捨てていこう」と言った。学生たちはそれぞれの大事なものを5つ、なぜか石に書いた。最終日に残った1つの石が、人生の核になるという話だった。

 

 

一日目、二日目と大事なものを捨てる儀式が行われ、私たちの手持ちの石は減っていった。

 

 

私は自分が何と書いたかさっぱり覚えていないが、なぜか親友が「母」と「歌」の石を持っていて一番に「母」を捨てたのを覚えている。きっと親友の「母」は今も座間味島の海に沈んでるんだろう。

 

 

私たちは座間味島の小学校を訪れたり、海ではしゃいだり夜に部屋で友人の誕生日祝いムービーを撮影したりと、それはそれはエモい夏の思い出を丁寧に築いた。


最終日、島から沖縄本島に帰るまでのフェリーの中で、教授が残り2つになった石の片方を選び取って海に捨てるように言った。私もそうしたし、みんなもそうした。パッションが炸裂した旅の当初とは違い感慨深い雰囲気で、飲まれやすい私はそれだけで泣きそうになった。

 

そろそろ到着するという頃に、教授がフェリーの端で佇んでいるのが見えた。

私は教授の元へ行って、少し話した。教授は、私たちプログラム参加生のメンバーがいかに素晴らしいかを黄昏れながら話してくれた。

 

 

私はこの日を一生忘れまいと思った。

 

 

教授に、最後に残った石を見せた。教授はにっこりと笑って言った。

 

 

 

 

「でもね、結局一番大切なのは『自分』だよ」

 

 

 

 

 

いや自分かい。2泊3日何だったんや。

 

 

 

 

 

 

【余談】

同じ学科の天真爛漫な友達の石が「楽しく生きる!」だった。名詞じゃなくても良いの?

 

 

G

Gが嫌いだ。あいつを最初にGと呼称した人を称賛したい。なぜならあいつは「ゴキブリ」と字ヅラから既に気持ち悪いから。どうやったらゴキとブリという気持ち悪い単語を合わせることができるのか。それが人間のやることか。

 

 

Gを見るとぶっころしてやりたいと気持ちは逸るが実際に殺せたことなど一度もない。できることはただ焦点をずらして脳が認識しないように努めながら、大学の入学式で大量のサークル勧誘のチラシから逃れた時のように足早にその場を去ることだけである。

 

 

だから若いうちから結婚条件を「虫を殺せる男」と公言していたし、ドラマや映画で「君を守る」的な台詞を聞くと「何から?Gから?」と詰めたくなる。

 

 

 

母が、実家に何年振りにGが出たと話していた。母も私と同じタイプなので「で、どうしたん?」と聞くとマンションの違う階のおばちゃんを呼んで殺しに来てもらったと言った。Gの退治で他人をウーバーイーツみたいに気軽に呼ぶ奴初めて見た。

 

 

Gの話を聞くと突然怖くなってしまって、仕事帰りにドラッグストアに寄ってGを殺すスプレー缶を買おうとした。あとは予防にGが来なくなるスプレーなるものと、Gホイホイ的なアレを買おうと決めていた。

 

 

実は長年悩んでいるのだが、私はこれらを自分の手で買うことができない。パッケージにあるイラストのGがリアルすぎて無理なのだ。たまにポップなタッチのものもあるが色もツヤも気持ち悪さが緩和されておらず、とても指で触れることができない。

 

 

しかも商品の表面にはゴキとブリというキショネーミングが書いてあるので、いつもは先述した特技:焦点ずらしを繰り出して自分の視界にGのイラストや商品名が物体として登場しないようにするしか手立てがなかった。

 

 

けれど今日こそはひとつ腹をくくらなければとぐっとこらえ、買い物かごを床に置き、指でワンタッチ引っ掻くように触れることでピタゴラスイッチ的に買い物かごに落とそうとした。

 

 

無理だった。「ウワアア無理!!!!!!!!」と叫んだ。

 

 

二度ほどチャレンジしたがやっぱり無理で途方にくれていたとき、買い物中の優しげなおばさまが通りかかったので「あの、すみません。このスプレーを私のかごに入れてもらえませんか?」とお願いした。


おばさまはぎょっとしたような顔をして「嫌です」と言って去った。

 

 

生きてきて聞いた全部の「嫌です」の中で ずば抜けて傷ついた。

 

 

仕方なくレジまで店員さんを呼びに行って、「すみません、Gのスプレーをちょっと取ってほしくて……」とお願いした。

 

 

愛想の良い店員さんが「はーい」と高い声で言って、なぜか白い服を着た男性を呼んできた。その人が「お伺いしますね~」と言ってきた。え?伝わってる?私の意図……

 

 

聞くことができないので仕方なくGのコーナーへ連れて行くと男性は「???」と不思議そうにして、容易にスプレーを取ってくれた。ただ焦点が合わせられない私は商品が選べないのでその都度男性に商品説明を求めながら聴力で情報を収集し、購入に至った。

 

 

頭を下げて先ほどのレジで会計をした。レジの店員さんは私のかごを見て「あれ?医薬品は大丈夫ですか?薬剤師と話されました?」と朗らかに言った。

 

 

私は顔を真っ赤にしたまま「大丈夫です」と答えた。