全部おとぎ話であれ

きらいなものを1000文字で語る

握手

息子9歳と娘6歳がよく言い合いをする。そのたびに我が家では仲直りの儀式として「気づけば握手」を取り入れている。


「気づけば握手」とは二人の手を無理矢理繋がせて母親の私が「気づけば握手!気づけば握手!」とアクシュに爆裂なアクセントを置いて歌うというものなのだが、言い合いが始まった時点で「はい、『気づけば握手』するよ!」と有無も言わさず握手させるので、娘に至っては「はい、」の時点で察して吹きだしキャハハと笑い始めるのである。


ところが今日はなかなか熱いバトルだったらしく「『気づけば握手』するよ!ねえ!『気づけば握手』するって!おい!」と叫んでも全くケンカをやめなかった。
私は私でイライラしてしまい「うっるっせ~~~~!握手しろ~~~!コラ~~~~~!」と叫び、街中で握手をせがむ強めの政治家みたいになってしまった。豊田真由子先生かな?


その直後、娘が息子を叩いた。日ごろから手を出すのは絶対悪と教えているので娘の手首を掴んで「叩いたよね?!この手ちょんぎるけんね!」と言うと「イヤー!!!!!」と泣き始めた。


「おてては何のためにあるんね?!いつも言いよるじゃろ?!優しくするためにあるんじゃろ?!?」と言うと、娘はしくしくと泣きながら言った。


「握手するためにある……」


違えよ。いや違わんけど。落語みたいな話じゃの。