全部おとぎ話であれ

きらいなものを1000文字で語る

産婦人科

もろもろあって土曜日に倒れて救急車に乗った。だから貧血の薬をもらいに産婦人科に行った。

 

 

6年前に出産をしたのと同じ産婦人科に行った。古き良きみたいな病院だったのに建物の建て替えでおしゃれになっていた。受付で紹介状を出し待合室に座る。隣にいた妊婦さんの足首にゴリゴリのタトゥー入っててヒッとビビる。

 

 

検尿をするように言われてトイレへ向かう。いつも思うが検尿の適量が分からん。勝手なイメージだけでいうと少ないより多いほうが恥ずかしい気がするので半分以上を捨てた。中学校の同級生が看護師でそこで働いているのが精神的にキツい。


診察を受け、「じゃあ内診室へ」と言われてガラガラと入る。そこでズボンとパンツを脱ぎでかい椅子に座る。

 

 

よく「男には出産の痛みは分からない」「母親の強さの原点は分娩時の忍耐」などど聞くが私はそんな生理的なものよりも羞恥心の方が大問題だと思う。世の中の男よ、このガンダムみたいな椅子に座ったことがあるんか?下半身まっぱだかで大股広げんとー健康かどうか分からん人体のシステム知っとんか?

 

 

カーテンの向こうから「じゃ動きまーす」と言ってウィーンと椅子が自動で動き、股はさらに大きく開かれ下半身が上向きになる。

 

 

 

 

ハッズ

 

 

 

 

クソハズいど

 

 

 

 

股に超音波の機械を入れられ「モニター見えますかー?」と言われ「や、何も映ってないです」というと「あ、午後イチだからつけ忘れてた」と返ってきてカーテンの向こうから看護師さんがテレビ画面の電源をつけに来た。同級生だった。死にたい。平然とした顔で「あ、見えました」と言った。

 

 

「ここが卵巣で~こっちも卵巣~うん、問題は無さそうです~」

 

 

個人的にクソでかい問題はあったが「ほんとですか~」と答えた。

 

 

内診が終わり再び診察室で医師と話した。「市民病院に運ばれたんですねえ…いけんですねえ…じゃあ今日はこの後ホルモンを調べる注射を打つのと…」と真顔で説明されるのを真剣に聞きながら「さっきカーテンの向こうで自分の股を触っていた人とこのトーンで話すのむずい」と思った。こいつら羞恥心メーターがイカレてる。私の脳内では俄然つるの剛士上地雄輔と誰か一人が踊り狂っていた。

 

 

診察室を出る時、看護師の同級生が「お大事に~」と手を振ってくれた。癒やされた。モニターつけとけやとは思わなかった。可愛いから。

 

 

注射を待つ間、隣にいたママさんがちょっとデカめの赤ちゃんを抱いて揺らしていた。

 

 

月齢健診かなと気になったけど、見たいのを我慢した。私は赤ちゃんが死ぬほど好きだ。子供より赤ちゃんが好き。だから他人の赤ちゃんでも油断するとじろじろと見てしまうので、不審に思われないようにイキった態度でスマホを触っていた。ほんとはめっちゃ見たかった。

 

 

するとそのママさんが急に赤ちゃんをトントンを寝かしつけながら「ほた~るの~ひか~り~まど~のゆ~き~」と歌い始めた。まさかの蛍の光だった。「センス」と思った。

 

 

 

 

夜、夫から電話があって「病院どうだった?」と聞かれた。「知らんお母さんが待合室で赤ちゃんを蛍の光で寝かしつけしよった」と答えると死ぬほど笑っていた。