全部おとぎ話であれ

きらいなものを1000文字で語る

アイムファイン、センキュー

「アイムファイン、センキューってネイティブは使わないんだよ」と言われたことがある。謎。使わない英語を習わせてきたことが謎。


中学の時、年配の英語の先生が授業の最初にランダムに生徒を当てて「How are you?」と聞いていくシステムがあった。毎授業それをやるのだがみんな思春期で照れがあり一辺倒に「アイムファイン、センキュー」しか言わないので先生がしびれを切らして「前の人が言った答えは禁止」と意味の分からないルールを持ち出した。まじで意味が分からん。先に当てられた人がファインだったら自分がたとえめっちゃファインでもファインを名乗れないってどういう理屈?1クラス1ファインのしばり何?


だから最初の奴がファイン、次の奴がソーソ―を使ったらもうその後言うことがない。いつも3人目から「何を言うんだろう」の変な雰囲気が流れた。しゃーなし「アイムタイヤード」だの「アイムハッピー」だの答えると決まって「Why?」と理由を問われるから続きにグダグダしてしまい当てられる奴は軒並みスベった。4番目とか5番目になると「いやまだやるんかい」という欝々とした空気が流れるのだが定年後のおばあちゃん先生はいつも生き生きと進めた。


忘れられない出来事がある。その日はクラスでもあまり目立つ方じゃなかった男子が3番目か4番目に当てられた。そいつは「アイムサッド」と答えた。先生はいつものように「Why?」と言った。そいつは真顔で「マイドッグ、ダイド」と答えた。先生は「オ~~~ウ」と言った。教室が何とも言えない空気に包まれた。お前、オ~~~ウじゃねえわ。責任とれ。私は(不謹慎だが)あれほど笑いをこらえたことはない。もし今催眠術にかけられて「今まで生きてきて一番笑いをこらえたのはいつ?」と聞かれたら世間の目など気にせず正直にあの時だと答えてしまうと思う。


あれ以降、先生の「How are you?の答えは前の人と被っちゃいけないシステム」はナチュラルに解除され、みんなが一辺倒にファインと答えるデフォルトに戻った。


オ~~~ウと言われた彼は卒業前にサバゲ―のHPを作っているのがクラスにバレて、(当時サバゲーは今ほどポピュラーじゃなかったので)「なんかあいつ怖くない?」と言われて一線引かれていた。私には分かる。彼は何も悪くない。彼というモンスターを生み出したのは先生、あなたです。人が銃を持つワケを知ってください。




そんなことを思い返しながら冒頭の友人に「
じゃあアイムファインじゃなくて何て言うん?」と聞くと「アイムオーケーとか」と返ってきた。クソ簡単やないか。最初からそう言えよ。そうすればあんな悲劇は生まれんかったんぞ。