全部おとぎ話であれ

きらいなものを1000文字で語る

毒舌でごめんなさい

毒舌でごめんなさいと言われたことがある。ごめんなさいと思うやつは毒を吐かない。

 

 

そもそも毒舌という言葉自体ちょっと腹が立つ。歯に衣着せぬ物言いでズバズバと相手のことを斬ることを舌に毒と書いて毒舌というが、舌に毒を乗せれば死んでしまうのは舌のほう、つまり毒舌側だ。毒を吐いても吐かれたほうは避けられるけど吐く側はもう喉も咥内もどえらいことになっていて、たぶん吐き始めた序盤でそっちが先に死ぬ。

 

 

さっき「歯に衣着せぬ物言い」と書いたところでなんかこれもおかしくないかと思い「歯に衣着せぬ」でググったところ、「言葉を飾ることなく率直に意見を述べることや遠慮なハッキリと物を言うこと意味する慣用句」と出てきた(2020年4月10日現在)。誤字ってるやん。「遠慮なく」じゃないん?「遠慮な」になってるし。ハッキリと物を言え。あと歯に衣着せることある?上の歯がトップスで下の歯がボトムス?

 

 

要は毒舌でごめんなさいというのは「こっちは好き勝手言わせてもらうからそっちは傷つくだろうけどそれはなんやかんや自分でケアしてね!でもこっちの言ってることは正しいから反論せず飲みこんどいて!」の最初か最後につける乱暴な言葉なのだ。

 

 

実際ここまでは譲歩するとして、何が腑に落ちないって毒舌でごめんなさいと言うやつはだいたい毒舌に弱い。反対に自分が斬られる側になると顔を真っ赤にして怒るか、あるいはどの自分より強い毒舌にひれ伏して小さくなる。毒をもって毒を制すが地で成立するので世の中に毒舌モンスターが量産される。

 

 

Twitterなんてその主たるもので、もう正義という毒で人を言い負かしてたまらないやつらの巣窟だろう。最近ではエアリプという荒業も生まれ舌がどろどろのやつがノールックで毒を吐いてくるから厄介極まりない。

 

 

ところで、なりふりかまわず人を傷つけるのが毒舌ならば誰のことも励まし慰め慈しむ薬舌なるものがあってもいいんじゃないか。そう思い立って検索しようとしたら検索履歴が「薬 副作用 吐き気」「薬 副作用 かゆみ」と表示された。詰んだ。この世はもう終わりだ。