全部おとぎ話であれ

きらいなものを1000文字で語る

わいもわいも

大学3年の夏。21歳の誕生日も間近という時に、同じ学科の友人と4人でパスタ屋さんに行った。美希ちゃん、さや、瞳、そして私。って普通に名前出していいんだろうか。

 

 

私たち4人は隅のテーブルに座った。真ん中のほうで同じ大学の男女おおぜいのグループがワイワイと楽しそうにお酒を飲んでいた。とてもひねくれていた私は「ああいう大学生って感じ苦手~~~」と横目で見ていた。

 

 

すると店内にスティービーワンダーのハッピーバースデイの音楽が盛大に流れた。見るとその大学生の団体のもとにケーキが運ばれていた。立ち上がってワーッと盛り上がるウェイ軍団。たぶんサビを合唱せんと死ぬ人種。

 

 

私は大きな声で「うるせ~!わいもわいも!わいも誕生日じゃ!わいにもケーキ持ってこいや~!」と広島弁で叫んだ。それも大学生軍団featuringスティービーワンダーの爆音に無残にもかき消された。さやと瞳はあははと笑っていたし、同じ誕生月の美希ちゃんはなんなら私にノッて言っていた。

 

 

 

 

ひととおりウェイ達が祝い終わって店内に落ち着きが戻り始めた頃、なぜかまた同じ音楽が流れた。は?さっきやったくね???デジャヴ????

 

 

と思ったら今度は店員がにこにことこっちに誕生日ケーキを持ってきた。うそだろ。恥ずすぎんか。よく聞くとさやと瞳が事前に店側にサプライズを頼んでいたらしい。大学生軍団と被ったのは偶然。さきほどの自分の悪ノリを思い出して顔から火が出そうだった。あのウェイ達が遠くから「おめでとー!」と叫んでめっちゃ歌ってくれた。全員ただのいいやつだった。まともな親の庇護のもと育ったやつらだった。

 

 

あれ以来謎の敵対心で調子に乗るのはやめようと決めたし、私たち4人のグループ名は卒業まで「わいも」になった。